ショコラ~愛することが出来ない女~
「康子さん」
「え?」
リビングへの扉の所で、庄司くんは立ち止まっていて。
私はそれにも気付かずに進んでぶつかってしまう。
大きな体に私の体が勝てるはずもなく、反動で後ろによろけると、彼の手が伸びて私の肩を捕まえる。
「……結婚しません?」
「は?」
思わず素っ頓狂な声が出てしまった。
代わりに、ようやく顔を上げることも出来た。
庄司くんは私とは対照的にさっぱりしたような顔をしていた。
「職場が一緒だとさすがにって思ってたんですが。
部署変わるんならそれもありかなって。
俺康子さんに会えないの結構へこみますし。
だったら一緒に暮らした方がいいでしょ?」
「な。何言ってんの」
「それに、その方が本気度合いも皆に伝わりますよ」
「……」
「皆をあっと言わせてやりましょうよ」
息を飲んで黙ってしまった私を、庄司くんは何とも言えない表情で見つめた。