ショコラ~愛することが出来ない女~
庄司くんを食いつくすほど欲しいと思うか。
それはNOだ。
ある程度の理性がちゃんと働く。
だったら、結婚したとしても彼を壊すほどのことにはならないかもしれない。
それに、この先もずっとずっと一人で生きていくのかと言われたら、それも嫌だ。
寂しさは、年齢を追うごとにふとした瞬間にダメージとなって入り込んでくる。
もちろん最後のは打算だ。
分かってるけど、そういう計算をする歳に私はなってしまっている。
「ホントにこんなおばさんでいいの?」
「康子さんがいいんですよ」
甘えたい。
甘えたい。
誰かの庇護の中に入りたい。
時折切実にそう願う。
そのタイミングでこんなことを言われて、断れるはずがない。
「……じゃあ、よろしくお願いします」
「いいんですね?」
「あなたよりずっと先に定年迎えちゃう奥さんなんて気恥しいけどね」
小声で言って、彼の腕の中へ飛び込む。
もう余計なことは何も考えたくない。
打算にもズルさにも、お願いだから気付かないで。
何も知らないまま、私を受け入れて。
彼は私の背中に手を回し、貪り食うようなキスをした。
それに応るようにして寝室へなだれ込んだのは、もう流されてしまいたかったから。
今、目の前にある欲望にすがりたかったからだ。