ショコラ~愛することが出来ない女~


 そうして、月日は流れ7月。

庄司くんは、マイナーな山雑誌の編集部に異動になった。
本人の希望らしく、仕事自体は楽しそうにやっているけれど、傍目には左遷という印象が強い。

当然、庄司ファンからの風当たりは私の方にもきつくなってくる。
ここで結婚なんて報告したらなんと言われるのかわかったもんじゃない。


 結婚の話は、今のところ宙に浮いている。
仕事が忙しいとか理由は適当につけているけど、要は私に隆二くんに会いに行く勇気が無いのだ。

その理由も今日の校了をもって使えなくなるけど。


「はい、お疲れ様ー」

「ねぇねぇ、飲みに行こう?」


思い思いに業務の終了を祝う社員たち。
いつもなら一緒に騒ぎに行くところだけど、今の気まずさではそれもかなわない。


「康子さん、飲みにいきません?」

「ごめん。今日は用事あるの。みんなで楽しんできて? ほら、これ少し足しにしなさい」


封筒に1万円を包んで森宮ちゃんに持たせる。
通常、業務終わりの飲み会のときは私が多く出す。その分だと思えば高くは無い。

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