ショコラ~愛することが出来ない女~
家に帰るのも億劫で、外で食事を済ます。
オヒトリサマで食べるのも慣れているけれど、最近は誰かと一緒にいることが多いからか少しだけ寂しい気がする。
やがて時刻は夜の9時を回る。
そろそろいいか。
片付けのバイトちゃんたちも帰っただろう。
夜の『ショコラ』は隆二くんの秘密基地みたいなもんだ。
次から次へと思いつくデザートのアイディアを、形に変えていくための場所。
誰もいれずに一人きりで、彼は幸せそうに材料を混ぜる。
時折ぶち壊したくて仕方なくなった。
自分の入り込めない彼の空間が悔しくて。
そんな風に思ってしまう自分の感情にも嫌気がさす。
どうして大切なものを大切に守ることが私には出来ないんだろう。