ショコラ~愛することが出来ない女~
「隆二くん」
「ちょうど康子さんに伝えたいことがあったんだ。入って」
「伝えたいこと?」
ざわりと背筋が冷えた。
まさか、森宮ちゃんのこと?
あれから、森宮ちゃんにも聞けずにいる二人の関係。
イヤだ。隆二くんの口からは聞きたくない。
思わず体を引いてしまうと、隆二くんは怪訝そうな顔をしたけれど、やけに強引に私を引き入れた。
「入って。聞いてくれよ。この間詩子にフラッペのアイディアを考えさせたんだ。
アイツ、凄いよ。俺が考えてもみなかったものを考え出した。
その発想力は康子さんから受け継いだな、多分」
「詩子に?」
なんだ。詩子の話?
焦って損したわ。
じゃあ、隆二くんの方は再婚とか好きな人が出来たとか、そういう話じゃないのね?
自分が明らかにほっとしたのを感じる。
何なんだろう、私って。
自分は結婚するって言いに来たくせに。