ショコラ~愛することが出来ない女~

「ついに詩子に調理させる気になったの?」

「いや違うけど。あいつ、意外と商品知識があってさ」


何も聞かずに、珈琲を入れてくれる。
どうも隆二くんは興奮してるみたい。

詩子の成長が嬉しいんだろう。
職人気質の隆二くんはこだわりが強すぎて、詩子の作るものを認めていないようだったから、これは大きな変化だ。
私もびっくりよ。

私はコーヒーに砂糖を入れ、一口含む。

おいしい。
いつもの味だ。

口の中に甘さと香ばしさが広がる。

ようやく肩の荷が下りたかのように、大きく息を吐き出せた。


「おいしい……」

「詩子のフラッペも旨かったよ。康子さん、今度昼間店に来てやってよ。
食べてやって欲しい」

「うん」


嬉しそうに笑う隆二くん。

でも、……詩子はホントにここの仕事に満足してるのかしら。
思えば高校時代からなし崩し的にウェイトレスやってるけど、あの子の発想力があればどこでもお仕事できそうよね。


「ねぇ。詩子に他の仕事をやらせる気はないの」

「……なんで?」


隆二くんの眉が怪訝そうに歪む。
彼からこういう表情で見られることはあまりない。
それほど、詩子が大事?


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