ショコラ~愛することが出来ない女~
『だったら忘れてくださいよ。もう過去でしょう?』
脳裏を、庄司くんの言葉が伝ったのはその時だ。
どんなに好きでも、結婚してしまうとうまくいかない。
私と隆二くんは、そういう関係だ。
だからこそ別れた。
だからこそ、新しい恋に踏み切った。
庄司くんとの恋愛は、この土壇場で思い出すくらいの重さはある。
「……じゃあ、お言葉に甘える」
逃げるように隆二くんの手のひらから自分の手を引っこ抜いて。
私は戸口へと歩いた。
その背中へ、追い討ちのような一言。
「康子さん、幸せになれよ」
返事の代わりに手を振った。
声を出したら、心の中を読まれてしまいそうな気がして。
結婚も離婚も、再婚も。
みんな自分で決めているのに。
どうして私はこうなんだろう。