ショコラ~愛することが出来ない女~

ぐつぐつ煮え立った鍋を詩子が覗き込む。


「おいしそうだね。母さん良く来るの?」

「そうね。最近こういうとこのほうが多いわ」

「あーだから、肌つやつやしてんの? 前より若返った気がする」

「それは多分若いエキスもらってるからよー」

「へー」


カマかけてみたんだけど、詩子はさらりと流す。
分かってない?
これは直球で行かないと駄目かしら。

なんて思っているうちに詩子の顔色が変わってくる。


「って、か、母さん?」

「私ね、再婚しようと思ってるのよ」

「ぶっ」


詩子の口から白菜が飛び出す。

あら、いい反応。
これくらいリアクションあると面白いわ。


「相手は会社の後輩、32歳」

「えー!!」


目を白黒させて、手をこぶしにして胸元まで上げた。
興奮してるのも面白い。

やがてその手を振りながら根掘り葉掘り聞き出し始めた。
私はそれに当たり障りのない程度に答えていく。

隆二くんに話すときもこれくらいの余裕が欲しかったな、なんて苦笑してしまう。

< 177 / 292 >

この作品をシェア

pagetop