ショコラ~愛することが出来ない女~


前髪を手でかきあげて、目元を隠す。

違う。
こんなの八つ当たりだ。

隆二くんの『ショコラ』
誰も立ち入らせてもらえないその場所に、私が本当に感じてるのは敗北感だ。


「……『ショコラ』を立ち上げる時、私は反対した。
それは、隆二くんが私の意見を聞いてるようで聞いてくれなかったからよ。

あの人はいつもそう。
変にこだわりが強すぎて人の意見を聞き入れない。

そして、私はそれがずっと不満だったの。

結婚して一緒に居て。
私は人生のパートナーで居たかった。

だけど、彼は一人で決めてしまう。
私なんて、経済支援するだけの存在でしかなかったのよ」


『ショコラ』には適わない。
その思いがどれほど自分を縛っているのか、改めて詩子に話したことで痛感する。


詩子は眉を寄せている。
そうね、こんなこと離婚するときだって説明なんかしなかったもの。
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