ショコラ~愛することが出来ない女~
しばらく思い悩んだ様子の詩子は、ゆっくりと笑顔を見せる。
「……あたしは、あそこがいいのよ。
接客業が好きだし。
『ショコラ』はもはや父さんだけの夢じゃない。
あたしだって、一緒に作って来たんだから。
そう思うくらいには、父さんだってあたしのこと認めてくれてると思う」
「詩子……」
『一緒に』
その言葉が胸を打つ。
詩子は、私とは違う。
ちゃんと愛し方を知っている。
彼の夢を受け入れて、そこに自分の夢も見出せる。
ああ、そうか。
すとんと胸の奥に何かが落ちてきた。
納得?
そうかも。
愛するってそういうことだって。
私は今理解したのかも。
そんな風にすれば隆二くんの傍に居られたんだ。