ショコラ~愛することが出来ない女~
「……その気にはならない。隆二くんとは、近くに居すぎると上手く行かないのよ」
「母さん」
「幸せにしてくれるって言ってくれる人も出来たし。私は別の道を行く」
「……母さん」
「詩子も、……隆二くんも、ちゃんと自分の幸せを見つけなさい」
最後のは強がりだ。
本当は忘れないで欲しい。
いつまでもいつまでも、私のことを好きでいて。
私が誰と居ようが、あなたは私のものでいて。
独占欲ばかりのわがままな恋だった。
もう本気で、これを手放さなきゃいけない。
「母さん」
心配そうな詩子に、にやりと笑ってみせる。
母親らしさをせめて詩子には見せ続けたい。
「さあ、詩子、食べるわよ。
これ全部空にしないと帰れないわよ!」
「う、うん! よし、食べる!」
そして、2人でお腹がパンパンになるほど食べた。
駅までの帰り道、生暖かい夜風を少し不快に感じながら、詩子はポツリと告白した。