ショコラ~愛することが出来ない女~
「彼氏、はいないけど。
……好きな人は出来たの」
「へぇ。どんな人?」
ようやく詩子にも華々しい話題が出来たようだ。
「うーんと。今は塾の先生をしてる人で。いつかは教師になりたいんだって。
ボーっとしてて、なんかどんくさくて。見てるとイライラする感じ」
「詩子、それ、ホントに好きなの?」
「でも、意外と見るとこは見てる人。あたし、彼といると自分の知らなかった自分を見つけれる。その人といると、自分の事好きになれる。……そんな人を、好きになったの」
「……そう」
「まあ、いいとこばっかじゃないけどね。こだわりばっかり強くてね。
なんとなく良い雰囲気にまでなってるのに、この間あたしが告白しようとしたら止められたのよ?
採用試験が終わったら、自分から言いたいからって」
少し頬を染めながら詩子は不満げに言う。
でも、今までと違って幸せそうな表情で。
私の胸もきゅっと詰まる。