ショコラ~愛することが出来ない女~


「聞けば聞くほど、隆二くんに似てるわね」

「ホントだ。ショック」


こだわりばかりが強くて。
でも大丈夫、詩子ならきっとどんな人とでも分かち合っていける。


「詩子は私に似てるけど、……でも、違うから。上手く行くと思うよ?」

「そうかな」

「そうよ。自信持ちなさい?」


私の助言めいたものに、嬉しそうに頷く詩子に、私は多分一生追いつけない。

あなたの方が、きっと幸せになるのは上手よ。

そう言えないのは、いまだ我を張って自分の中に居座る母親のプライドのせいだろう。


 駅で詩子と別れて、その姿が見えなくなった途端、体中の力が抜けていくような気がして。
近くの電信柱に寄りかかり、息を吐いたらもう止まらなくなった。


「……っつ、えっ」


好きなようにやってきたつもりだった。
自分の意思で何もかも選んできたんだと思ってた。

だけど結局私は、自分がどうしたかったのかも分かってなかったのかもしれない。

目先の感情を優先して、先のことも考えず楽な道を選んでしまったのかもしれない。


残ったのは、誰も居ないところでしか泣けない自分。

こんなものを、求めていたはずじゃなかったのに。




< 186 / 292 >

この作品をシェア

pagetop