ショコラ~愛することが出来ない女~
考えているうちに、彼のアパートの前に着いた。
居ないだろうと思ってきたのに、部屋には明かりがついている。
立て込んでるのは仕事じゃなかったのかしら。
驚かそうと、連絡もいれずに部屋の前まで来て呼び鈴を鳴らす。
私を見たらなんて言うかしら。
驚いた顔を想像すると楽しい。
「はい、どちら様ですか」
「私よ、庄司く……」
一瞬、時が止まる。
出てきたのは、5歳ぐらいの女の子を抱っこした庄司くんだった。
「パパ。だれぇ?」
「あ、パパのお友達だよ。舞、あっちでちょっと待ってなさい」
「はーい」
とことこと子供の歩いていく音。お弁当を入れた紙袋をつかむ指先が震える。
「ごめん。康子さん。実は娘が来てて」
「そ、そうだったの。ごめん。仕事が忙しかったんじゃないかって思って。……それで」
変な汗が出る。
どうしよう。こんなの持ってこなければ良かった。
咄嗟に後ろに隠したら余計目立ってしまったらしく、庄司くんが覗き込む。