ショコラ~愛することが出来ない女~
舞ちゃんは、家から持ってきたのかぬいぐるみをぎゅっと抱きしめ、庄司くんを見る。
「ママは悪くないよ。いつも優しいもん。お酒の飲んだときだけ、ちょっと変。いっぱい泣くの。いっぱい怒るの。でも舞はママ好き。明日、ママのとこ帰る」
「舞、明日はパパの方のおばあちゃんとこに行くって言ったろ?」
「やだ。ママのとこがいい」
「怪我が治るまでは駄目だよ」
「やだ!!」
舞ちゃんの目に涙が浮かんでくる。
「ママは舞と一緒にいてくれたもん。パパはいない! パパは舞のこといらないから置いていったんでしょ。舞のことキライなんだ」
「違うって」
「ちょっと、庄司くん。落ち着いて」
興奮する2人の間に入って、舞ちゃんを抱きしめようとした。
だけど、私が伸ばした手は、小さな手に跳ね返される。
「イヤ! ママがいい!」
「こら舞!」
「やめて」
私の大きな声に、2人とも動きが止まる。
なんだかやりきれない気分になって、立ち上がった。