ショコラ~愛することが出来ない女~
「私がいることでもめるんなら帰るわ。ごめんね。夜に」
「ちょ、康子さん」
「ここでいいわよ。あなたは舞ちゃんとちゃんと話して」
「……でも」
「私とはいずれまたゆっくり話しましょ」
バタンと音がなるほど強く扉を閉める。
そのまま数分歩いて、彼の部屋を振り返る。
追ってはこない。
当たり前だ。あんな小さい子を置いて追ってくるはずがない。
なのにそれに胸の奥が痛むのは。
「……私って、ホント駄目」
いつだって、一番に愛されたいと思う。
あんなに小さな子を相手にしてさえ?
欲深すぎる。
どうして?
どうしてもっとおおらかに人を愛することができない?
「……サイアク」
自虐的な言葉はらしくない。
それでも、それが飛び出してしまうくらい私は疲れていたのだと思う。