ショコラ~愛することが出来ない女~

「私がいることでもめるんなら帰るわ。ごめんね。夜に」

「ちょ、康子さん」

「ここでいいわよ。あなたは舞ちゃんとちゃんと話して」

「……でも」

「私とはいずれまたゆっくり話しましょ」


バタンと音がなるほど強く扉を閉める。
そのまま数分歩いて、彼の部屋を振り返る。

追ってはこない。
当たり前だ。あんな小さい子を置いて追ってくるはずがない。
なのにそれに胸の奥が痛むのは。


「……私って、ホント駄目」


いつだって、一番に愛されたいと思う。
あんなに小さな子を相手にしてさえ?

欲深すぎる。
どうして?

どうしてもっとおおらかに人を愛することができない?


「……サイアク」


自虐的な言葉はらしくない。
それでも、それが飛び出してしまうくらい私は疲れていたのだと思う。



< 199 / 292 >

この作品をシェア

pagetop