ショコラ~愛することが出来ない女~
「あ。康子さん」
「重役出勤?」
「はは。いえ。娘を送るのに1時間遅らせてもらったんです」
「そう……」
私が顔を伏せると、耳元に彼の気配がした。
「後でゆっくり話したいんだけど、昼休み空いてます?」
「お昼か。ごめん。私午後から外出だからちょっと無理だわ」
「そうか。俺も夜はまた娘を迎えに行かなきゃ行けなくて……。
じゃあ週末。親に預けるからちゃんと話をしよう」
「ええ。仕事頑張ってね」
彼の肩をぽんと叩いて送り出す。
しばらくすると勢いよく「原稿見てください」って声が聞こえた。
仕事だけでも楽しそうにやっていてくれてよかった、なんて思う。