ショコラ~愛することが出来ない女~
「俺、結婚することを話に行ったんだ」
「言ったの?」
「もちろん。康子さんに遅れをとるわけにいかないからね。この間報告してくるねって言ってからすぐ行ったよ」
「……そう」
よく見ると、疲れた顔をしている。
責めるのは間違ってるか。彼に非がある訳じゃないんだもの。
「そのときの返事はどうだったの?」
「黙って聞いて、最後には『分かった』って言ったよ。舞の養育費さえ払ってくれればそれでいいって。いつものYESマンのお綺麗な答えだった。舞は少しぐずっていたけど、泣くようなことはなかった。だから納得してくれたんだと思ってた」
「でも違ったのね?」
「うん。舞から泣きながら電話がかかってきて驚いたよ。だって、昔はアイツはそんなに酒を飲む方じゃなかったんだ。
まして酔って前後不覚になるなんて」
「……被害は娘ちゃんだものね」
「そう。信じられないよ。子供に手を出すようなタイプじゃなかったのに」
「……そう」