ショコラ~愛することが出来ない女~
私より『ショコラ』が大切になったのならば、きっと他にも彼にとって大切なものはいくらでも現れる。
私なんて後は老いていくだけ。
それなのに優しくもなれず、我が強くて彼を振り回してばかりいる。
嫌われるのなんて時間の問題のように思えた。
だから自分から先に別れを告げた。
嫌われるより先に自分から手を切りたかった。
でないと、自分を保っていられなくなるから。
ほら。
私と亜衣さん。
どこに違いがある?
正反対の立ち位置にいるのに、持っている感情はおそらく同じだ。
「……馬鹿みたい」
望みどおりにならないのは、私が無理な願いを持ち続けているからだろうか。
どうしたら詩子みたいになれる?
自分と一緒に周りの人をも幸せに出来るような、そんな人間になるにはどうしたらいいの。
「うっ、うえっ」
大人になると、声を出しては泣けない。
まして、それが往来であるなら。
だけど今日は、理性だけでは堪え切れなかった。