ショコラ~愛することが出来ない女~

 翌日もまだお盆休み。
仕事もないと時間がすぎるのが遅い。

亜衣さんはどうなった?
舞ちゃんは不安定になってない?
庄司くんは疲れてない?

心配ばかりが募って、何度も携帯電話を眺める。
だけど、かけるまでの勇気が出ない。

弱ってる声を聞いたら、別れる勇気はなくなるかしら。
頼もしい声を聞けたなら、私はまた頼りたいと思ってしまうだろうか。

夕方まで悩んで、やがて悩んでいることに苛立ってくる。

何してるの桂木康子。
こんな風にためらったりする女じゃなかったはずよ。

自分自身を叱咤して、ついに電話をかける。
夏の遅い夕暮れの時間で、窓から見えるオレンジに染まった太陽が目に眩しかった。


『康子さん?』


庄司くんの声は少し暗かった。
昨日の今日で元気でるわけ無いか。

私は努めて普通の声をだす。

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