ショコラ~愛することが出来ない女~

「庄司くん。お疲れ様。どう?」

『うん。大丈夫。ごめん、昨日連絡も出来なくて』

「いいのよ。亜衣さんの容態はどう?」

『頭を3針ほど縫ったけど大丈夫だって。アルコール依存の方がちょっと大変かもしれない。でもとりあえず明日には退院できそうだから』

「そう。……良かったわね」

『昨日、ホントごめん』


何度も繰り返される謝罪は愛情の現れか。
嬉しいような悲しいようなフクザツな気分。


「いいのよ。それより話があるんだけど」

『……ごめん。今はちょっと慌しいから。落ち着いたら連絡するから待ってて』

「でも……」


早い方がいい。
庄司くんが亜衣さんや舞ちゃんに余計なことを言う前の方がいいもの。


「じゃあ電話でもいいわ。結婚の話、白紙に戻しましょう?」

『康子さん?』

「今は亜衣さんや舞ちゃんの方を考えてあげて」

『それは、でも、ちょ、やっぱり会おう。顔見て話さないと』

「いいのよ。本当にもう。あなたの責任をちゃんとこなして」

『……とにかく、夜行くから』

「わかったわ」


苛立ちの混じった声で電話は切れた。
怒らせたかしら。

だけど早くしたい。
勢いが続くうちに言ってしまいたい。

そのうち寂しさに負けてしまったら、別れを言い出すタイミングを逃してしまうかも知れないもの。


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