ショコラ~愛することが出来ない女~
数枚の資料とともに歩きながら打ち合わせをしていると、向こうから庄司くんが歩いてくる。
最後に見たのはつい一週間前なのに、なんだかものすごく懐かしく感じる。
彼は私に気づくと一瞬足を止め、目をそらしながら頭を下げた。
「お疲れ様です」
「……お疲れ様」
そのまま、隣を素通りする。別れた男女としては正しい行動だろうと思うけど、別れたことを知らない森宮ちゃんは眉を寄せて私たちを見比べる。
「なんかあったんですか?」
「別れたのよ、この間」
「えー!! 何で!」
「男と女は色々あるもんよ」
適当に流そうと思ったけど、森宮ちゃんの視線が痛い。
ごまかされてはくれないのね?
「夜、飲みに行きますか?」
「そうね。行きましょうか久しぶりに」
「逃げないでくださいよ」
森宮ちゃんの言葉に笑っちゃう。
でも、このくらい言われたほうがすっきりするわ。
「逃げたりなんかするもんですか。そっちこそ7時までに仕事終わらせなさいよ」
「もちろんです!」