ショコラ~愛することが出来ない女~
「え? あの」
「私の彼氏、駅前のロイヤルホテルでシェフをしてる香坂さんなんです」
「こ、香坂くん?」
知ってるわ。隆二くんが昔お世話になった人だ。
『ショコラ』を開店させる前に勤めてたのがロイヤルホテルで彼はそこの先輩シェフ。
隆二くんの腕を見込んでくれててよく相談に乗ってくれてた。
私も何度か会ったことがある。
童顔で、隆二くんより歳上なのに年下にしか見えかった。
柔らかい髪は少し長く、襟足を一つに結んでいて。
格好良かったけど、個人的にはそこだけが気に入らなかった。
その香坂くんが、森宮ちゃんの彼氏……。
「あ、あは」
嫌だ。自然に顔がニヤついちゃう。
肩から力が一気に抜けたみたい。
「そうなんだ。どうやって出会ったの? どっちから?」
「なんか急に乗り気になりましたね」
勢いづいた私に、鋭いツッコミ。
「な、なんでもないわよ。それより森宮ちゃんの話聞かせて」