ショコラ~愛することが出来ない女~
「私は仕事の打合せでロイヤルホテルに行ったんです。コーヒーでも飲みながらってそこの喫茶に入ったら、たまたま休憩してた彼が戻るところとぶつかって。
いや、自分でもびっくりしました。出会い頭の恋なんてこの年でするのかーって。
で、何度か打合せをあのホテルにセッティングして。少しずつ顔見知りになって。そしてようやくここまでこぎ着けた訳ですよ」
私頑張ったでしょう、と言わんばかりに胸を張る彼女。
そうね、頑張ったわね。
若干公私混同してるところも、この際時効ということで良しとしましょう。
「じゃあ、どうして隆二くんのこと知ってるの?」
「え? いや、よく待ち合わせに『ショコラ』を使わせてもらってて。
知り合いの店だからコーヒータダで出させるって香坂さんが」
「ああ、そういうこと」
ケチ臭いわね、香坂くん。
コーヒー代くらいちゃんと払いなさいよ。
軽く舌打ちをすると、森宮ちゃんがまじまじと私を見る。