ショコラ~愛することが出来ない女~


「大丈夫です。それより、康子さんの方が」

「私は大丈夫よ。大して酔ってない」

「……らしくないから」

「え?」

「お疲れ様です。また明日」


聞き返した声には反応せず、森宮ちゃんはタクシーへ乗り込んだ。
行き先をちゃんと告げたから、大丈夫かなと自分が乗り込むのはやめた。

タクシーは、手を振る森宮ちゃんを乗せて遠ざかっていく。

残された私は、不思議なほど切ない気分になる。

「らしくないかしら。……そんなことないわよ」


私は強い女だ。
今までだって、自分の思うとおりに生きてきた。

仕事をしてれば満たされるし、寂しくなれば恋人を作ればいい。
そう簡単に思えてしまうくらい、これまで苦労なく男の人を手に入れてきた。

そう。手に入れるだけなら。
私には、持続させる才能はない。

だから、結婚なんて考えないで、そうやって生きればいいのよ。
そうしたらもう傷つくことなんてないもの。

やがてやってきた2台目のタクシーに乗り込む。
流れるようなネオンライトが気になって目を閉じる。

私は一人で生きるんだ。



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