ショコラ~愛することが出来ない女~
「……隆二くん?」
「康子さ……」
名前を聞き終わる前に、勢いよくドアを閉めた。
ちょ、ちょっと待ってよ。
なんで今さら隆二くんがここに来るの。
「康子さん! いきなり閉めることないだろ!」
「だって、ダメよ。ちょっと待って」
だって、今私ノーメークだし。部屋着だし。
ダメだって、隆二くんに会うときは完全武装してないと。
こんな姿見られたくないわよ。
「アイツがいるのか?」
「は? アイツって誰よ」
「結婚するって言ってた奴だよ」
「はぁ?」
思わず、扉越しに聞き返してしまう。
「いないわよ。私一人。でもちょっと今はダメ」
「なんで」
「化粧落としたばっかりなのよ」
「大丈夫。すっぴんでも十分美魔女だよ。なあ、話があるんだよ」
「ダメよっ……」
顔を抑える。
確かに以前はすっぴんも見せていたけど、あれから更に年数が経ってるのよ。
それに化粧してたほうが冷静を保てるし。
せめて眉を書きたい。
1分でいいわ。お願いだから待って。