ショコラ~愛することが出来ない女~
「あ、そうだ。アイス」
「はぁ?」
今度は隆二くんが間の抜けた声をだす。
「アイス買ってきて。高級なのがいい。ハーゲンダッツとか。そして一緒に食べながら話しましょ?」
「そりゃ、……いいけど。康子さん、一度頼むから開けてくれよ」
「……」
玄関ドアを抑えていた手を下ろす。
でも、やっぱり見られたくない。
顔を片手で覆ったままドアを開いた。
「康子さん」
「話なら、アイス買ってきてくれたら聞くから」
「よし。ホントに男はいないな?」
隆二くんは玄関の靴をざっと見て、満足そうに頷く。
なんなのよ。それを確認したかったの?
「すぐ行ってくるから」
「や、ゆっくりでいいわ。5分は帰って来ないで」
ポンと肩を叩いて走りだした隆二くんの背中に叫んだ。
大変だ。急いでメイクしなおさなきゃ。
いつもよりも3倍くらいの速くファンデーションを塗りつけていく。
はやる心臓は焦っているからかそれとも彼が来てくれたからか。
「多分、両方よ」
悔し紛れにそう呟いた。