ショコラ~愛することが出来ない女~
「ほんとに?」
「本当よ。笑っちゃうでしょ」
「笑っちゃうよ。……いや、俺は嬉しくてだけど」
隆二くんの口元が緩む。
もう見てられない。心臓が破裂しそう。
ダメだって。こんな事で嬉しがってちゃ。
「だったら、俺とよりを戻して欲しい。結婚しよう、康子さん」
「隆二くん」
嬉しい。
涙が出そうなほど嬉しい。
だけどね。無理よ。
私は、結婚に向かない。
今回のことでそれがほとほとよくわかった。
誰かを縛ることも、縛られることも向いてないのよ。
それに。
「……無理よ」
「前の男が忘れられない? それとも、もう俺ではダメ?」
「どっちも違う。結婚という事自体が、私にはできないことなんだなって分かったの」
沈黙が訪れる。
隆二くんは、私の言葉の意味を必死に噛み砕いているようだ。
どう言えば伝わるか、私も頭を悩ませる。