ショコラ~愛することが出来ない女~

「結婚……できていたろ? 俺との結婚生活は、そんなふうに言われるほどダメだった?」

「ダメじゃないわ。あなたのせいじゃないのよ。どちらかと言えば私のせいだわ。
……耐えられないのよ。あなたに他に大切なモノができていくことが。
知らないでしょう。私は詩子にさえ妬いてることが多々あったの。それでも、詩子は自分の子供だわ。我慢できた。
でも『ショコラ』には我慢できなかった。今もそうよ。
だから無理。『ショコラ』には私の居場所なんかない」

「あるよ」

「ないわ。『ショコラ』はあなたと詩子のものよ。私は何もしてない。そこに入ったら、きっと壊してしまう」

「康子さん!」

「無理なの。隆二くんにその気があるなら、また時々だけ慰めて。私はそれだけでいい」

「俺はもうそれだけじゃ嫌だ!」


隆二くんの強い語気に身が怯んだ。
彼の私に対するそこまでの意思を聞くのは初めてのことだ。

「隆二、くん?」

「詩子に背中押されてきたんだ。そんな簡単に諦めて帰れない」

「でも」

「俺だって、それでいいかと思った時期もある。結婚で君を縛るより、時々会うくらいの方がうまくいくのかも知れないって。
だけど、それじゃあまた今回みたいなことが起こる。俺はもう、こんな思いをするのは嫌だ」



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