ショコラ~愛することが出来ない女~
真剣な眼差しに、あり得ないほど心臓が動いてる。
だけど駄目だ。
そんな風に言われたら、私は言ってはいけないことを言ってしまう。
彼を傷つける一言を、私が嫌われる一言を。
「……やめて」
「やめない。戻ってきてくれ、康子さん。俺と詩子のところに。俺は今でも君を愛してる」
それは嬉しい。
でもあなたは失くせないでしょう?
あなたの大切な『ショコラ』。それにヤキモチを焼く私が、あなた達の側に要られるわけがない。
「でも、あなたは選べないでしょう。『ショコラ』か私か、なんて」
ああ。
どうして私はこういうことを言ってしまうの。
仕事と女どっちが大事?
そんな風に比べようのないものを並べて答えを迫る女は最低だって分かってるのに。
隆二くんは、一度短く息を吸い、食い入るように私を見た。
責められてるような気がして、私は先に目をそらす。
こんな風になるから一緒にいられないのよ。
嫌われたくない。
いつまでも好きでいて欲しい。
でもそれは、近くにいすぎると叶わない。
ほら、結婚なんてしなくたってこう。
近くにいすぎると、わがままばかり言ってしまう。