ショコラ~愛することが出来ない女~


「……分かった。行くわ」

「じゃあ、げんまん」

「指きり? 子供みたいね」

「約束は破らないこと。子供でもできる決まりごとだからな?」

「……そうね。分かった。必ず行くわ」


絡み合う小指から熱が生まれるみたい。
このまま離さないでと願うのは、あまりにも自分勝手だ。


「はい、指切った!」


弾むような語尾と共に、隆二くんは私の指から自分のそれを離す。


「じゃあ帰るよ。またね、康子さん」

「……うん」

名残惜しい。
図々しいのは承知の上でそう思う。


「隆二くん」

「何?」

「怒ってないの?」


私のさっきの発言を。
『ショコラ』より私を選んでと暗に言ってしまったことを。


「……説明するにはモノがあったほうが早いからね」


返される言葉はやはり意味不明で。
私はモヤモヤした気分を抱えたまま、家を出ていく彼を見送った。

そして部屋に戻って、せっかくのアイスがとろけてしまっているのに気づく。

「やだ、忘れてた」

わざわざ買ってきてもらったのに。

指ですくってぺろりと舐めると、濃厚な甘みが口に広がる。

「おいしい」

だけど、とろけすぎてしまった。
食べる時期を逃したアイス。
それはまるで私たちの関係のようだと思った。

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