ショコラ~愛することが出来ない女~
店に入り、窓際の席を陣取る。
私がブレンドコーヒーを頼むと彼女は「同じ物を」と小さく言った。
ウェイターが去ってしまうと沈黙が舞い降りる。
何の話をされるんだろう。
その後どうなったのか、私は何も知らない。
舞ちゃんはどちらに引き取られたのか、亜衣さんの依存症は回復したのか。
果たして彼女に直接聞いてもいいものかどうか。
それも悩ましい……。
「あの」
悩んでいるうちに、彼女の方が口を開く。
「なに?」
「庄司と、……関係を戻す気はないんですか?」
予想外の一言に、一瞬空気が固まった。
亜衣さんは、眉をしかめたまま私を見ている。
何なの?
「どういう意味?」
「庄司は、まだあなたのことが好きなんです。舞の為を思って私たちの側にいてくれますけど、いつもどこか寂しそうで。
私、彼のことが好きでした。戻ってきてくれて嬉しかった。だけど、一緒にいると思い知らされます。彼は私を好きなわけじゃないって。ただ、舞の為にここにいるだけだって。……本当はずっと、あなたを想ってるんだ、って」
「……」
「私、あれからお酒をやめるために努力しました。最初は禁断症状が辛くて大変でしたけど。最近ようやく落ち着いて夜を越せるようになってきて。舞の面倒も、もう私がちゃんと見れます。だから……」