ショコラ~愛することが出来ない女~
だから?
痛いような表情を浮かべて、そんなことを口走る彼女を見てると苛立ちが湧き上がる。
健気な言葉の裏側に見え隠れするのは、彼への愛情。
そんなに好きなら、何故私に譲ろうとするの。
自分が不幸になっても、彼さえ幸せならそれでいいって?
黙っている私に、彼女は言葉を続ける。
「あなたにもしまだ、庄司への愛情があるなら。
私のことは気にしないでください」
この一言に、頭の奥の一部分が妙に冷えた。
スーっと血が下がっていくような感覚を味わいながら、冷たい口調で彼女に話しかける。
「……そうして、もし私が庄司くんとよりを戻したとしたら、あなたには何が残るの?」
「え?」
彼女の表情から、愛想笑いが消える。
「自己満足? 私は彼のためにこうしたんだって? そんなもので幸せになんてなれるの?
私はキレイ事なんて大嫌いよ。
庄司くんがいなきゃダメだったからあなたはあんなことになったんじゃなかったの?
また今度同じようなことが起こって舞ちゃんを傷つけたら、今度こそ何もかも失うわよ?」
「なっ……」