ショコラ~愛することが出来ない女~
「言っとくけど。私と彼が別れたことに、あなた達は関係ないわ。確かにきっかけだったかも知れない。だけど別れたのは、それを乗り越えるくらいの愛情がなかったからよ。だから戻る気はないわ。あなたは自己犠牲に励むよりも、もっと違うことに労力を使ったほうがいい」
「あ、愛されてるあなたに何がわかるの!」
私の言葉に、彼女が取り乱す。
先程までの落ち着いた様子は消え、唇を震わせて私を睨みつける。
「私と舞は、捨てられたのよ?
確かに、私達少しずつすれ違ってきた。それは知ってる。でも夫婦だから、そんな時もあるんだって思ってずっと見ないようにしてきた。なのにあなたが現れて、彼はあなたに夢中になった。そして急スピードで私たちのことを忘れていった。
簡単に別れをつきつけられて、私は悔しかった。立派に舞を育てて、彼を見返してやりたかった。
なのに現実は、私はボロボロになって、彼はお情けで戻ってきた」
亜衣さんの瞳に涙が盛り上がる。
「惨めなのよ。愛されてないのに、彼は舞の為にだけにここにいる。
それでも嬉しいと思う自分が情けないの。
だから言いに来たのよ。少しくらい優越を味わいたかった。私が、彼を幸せにしたんだって、そう思いたかった。
例え彼が私の元から去っていったとしても、自分から言ったと思えば諦めもつくじゃない……」