ショコラ~愛することが出来ない女~

一つは、黄色いクリーム状の生地にココアのタルト生地。これはきっとベースはチーズケーキかな

一つは、白いクリームにバラの花を模したチョコレートののったもの。

一つは、ココア生地にオレンジムースの2層仕立てのもの。

一つは、丸いカップにスポンジとクリームと詰められて上に艶のあるマンゴーが載せられ、透明なジュレがかかっている。

そして最後の皿は、周りをかっちりチョコレートでコーティングされたケーキだ。

私はそれを一つ一つゆっくりと見て、最後に彼を見た。


彼が、望んでいることがわからない。

どれを選んでほしい?
5個も出したことに意味はあるの?


「……別れて、最初にヨリを戻した年に作ったのがこのケーキ」


ポツリと言った隆二くんは、一番左端のケーキを指さす。


「ただ甘いだけじゃなくて少し酸味のきいたチーズケーキだ」

「……へぇ」


どう返答していいかわからずに、曖昧に答えた。

彼は長い指を首の後ろに向けて、トントンと叩いた。
言葉を出すのに、とても悩んでいるようなそんな仕草。



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