ショコラ~愛することが出来ない女~


「約束したい。……けど、自信がないわ。私は自分でも呆れるほどすぐキレる」

「でもいつも戻ってくるじゃないか。結局、康子さんは離れられないんだよ。このコーヒーと俺のスイーツから」

「……」

「だから諦めてずっとここにいなよ」


どうだ、とばかりに胸を張られて、変な意地も何処かへ飛んでいった。


「……カウンター邪魔」

「はいはい」

仕切り板を押して、カウンターから出てくる隆二くんに手をのばす。

肩に指先が触れただけで、痺れるような感覚が広がっていく。
勢い良く抱きついて肩に顔を埋めると、甘ったるい香りとともに鼻をくすぐる隆二くんの香り。


「会いたかったよ、康子さん」


耳をくすぐるのは甘い言葉。
少し体をずらすと、少しシワの寄った口元が近づいてくる。
素直に唇を重ねると、彼は味見するようにゆっくりと舌先で味わった。


「チョコの味だ」

「そりゃそうよ。食べたもの」

「涙の味もする」

「どんな味?」

「そうだなぁ、少ししょっぱくて水っぽくて。でも洗浄してくれるようなそんな味」

「……よくわかんないわ」

「だろうね。康子さんは変なとこ大雑把だからなぁ」

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