ショコラ~愛することが出来ない女~
そして。
「……寒い」
「ちゃんと入りなよ布団」
「途中でふっ飛ばしたのは隆二くんじゃないの」
文句を言いつつ、布団に潜りこむ。
「二階は今電気がつかないんだよね。配線いじっててさ」
そう言って、彼は一度厨房に戻るとキャンドルを灯して戻ってきた。
「メリークリスマス」
「今更?」
「そう、最初にしようと思って忘れてた」
「ふふ」
小さな灯りが目の前で揺らめく。
「私が他の人と再婚しようとしたことは怒ってないの?」
「だって、惚れたんだろ? 俺達の間に約束はなかった。から、仕方ないとは思った。でもこれからはダメ」
「ん」
「指切り」
「また?」
キャンドルに誓おう。
指と指を絡ませて。
自分の愛し方に自信はまだない。
だけど、あなたのケーキを楽しみにすることなら私にもできる。
来年も、再来年も私を唸らせて。
美味しくて美しい、あなたの最高のケーキで。