ショコラ~愛することが出来ない女~
「そうよ。詩子の母です。よろしく」
「俺、松川宗司と言います。詩子さんとお付き合いさせていただいていて。今は2階で個人塾もさせてもらってます」
「そう。よろしくね。松川くん」
にっこり笑うと、目をぱちくりとさせる。
「すごいね。お母さんとは思えないほど綺麗だなぁ」
ホワっとそんなこと言うなんて。あらこの子いい子じゃない。
でも詩子は面白くない顔で松川くんの足をつねってる。
うふふ。たまには詩子にヤキモチ焼かれるのも面白いわ。
「コーヒー淹れましょうか」
バイトのマサくんがそう言うけど首を振る。
「隆二くんは?」
「厨房で準備してます。俺たちは入っちゃダメだそうで」
「ふうん」
含み笑いをすると、カウンターにいる知らない女の子が笑う。
この子は誰かしら。マサくんの彼女さん?
「ちょっと父さん。母さんが来たわよ」
「分かってる! ちょっと待ってろ」
奥から鋭い声。
さあ。詩子のためのスイーツはどんなのかしら。
イチゴのムース?
濃厚なチーズケーキ?
それとも、スタンダードなクリームのケーキ?