ショコラ~愛することが出来ない女~
「じゃあ切るわ」
「その前に、ちゃんとこのろうそくに火をつけろぉぉぉ。俺がどれだけこのアレンジに力入れたと思ってんだ」
「あー。うるさい父さん。分かったわよ。ちょっと宗司さん、ライターとって」
「えっと、何処だっけ。この棚だよね。あ、うわ。うわあああ」
ガサガサガサ、とけたたましい音。
宗司くんとやらはうっかり者なのかしら。
「あはは。宗司さんホントドジね。ほら、どいて片付けるから」
しかも詩子は慣れっこになっているようだ。
手早く片付けて、彼の怪我を心配する。
イライラしないのかしら。
……私はこのタイプと付き合うのは無理そうだ。
凄いわ、詩子。尊敬する。
「マスター。飲み物はどうします? お酒出します?」
「ああ、厨房の冷蔵庫にワインが数本冷やしてあるからそれを開けろ。
あと、マサは料理を運ぶのを手伝え」
偉そうに指示を出しながら隆二くんが私を見る。
なんか恥ずかしくて笑っちゃう。
いつ切り出そうか。
目と目で相談しながら、とりあえずは乾杯まで待つことに。