ショコラ~愛することが出来ない女~

「詩子23歳の誕生日おめでとう!」

「ありがとう!」


一気にろうそくの火を吹き消して、拍手に包まれた詩子は魅力的な笑顔を見せる。


「さ、切ろう。えっと何人よ」


主役なのに場を仕切り始める詩子に、プレゼントを渡す。


「おめでと、詩子」

「あ、ありがとう。母さん。なに? カバン?」

「そうよ」


OLもこだわる一品よ。
インナーポケットがたくさんついてて機能的なのに、見た目は凄くおしゃれなんだから。
デートにもピッタリよ。


「と、これ、何? 手紙?」


そのカバンの中から白い封筒を取り出す。
そして中を見て、詩子は目を丸くした。


「……婚姻届!」

「そうよ。心配かけたけど、隆二くんとやり直すことにしたの。もう一度、一緒に暮らしてくれる? 詩子」

「父さん、やるじゃない」

「当たり前だ。俺を誰だと思ってるんだ」

「ケーキ馬鹿のヘタレ親父」

「なんだと、こらー詩子」

「嘘よ。ちょとだけ見なおした」


いたずらをした子供のように笑う詩子に、私も隆二くんも顔がほころぶ。
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