ショコラ~愛することが出来ない女~
3 仕事とプライド

 クリスマスソングが流れる会社の食堂で、私は社長と珈琲を飲む。

安い珈琲はおいしくない。
でも眠気は覚めるからまあいいか。


「という訳で、桂木にこのプロジェクトを頼みたいんだよ」


社長は白髪交じりの頭を撫でさすりながら、資料を私に手渡す。
それにざっと目を通して顔を上げると、ニヤニヤ笑う社長と目があった。

やらしい顔しやがって。

大体、社長なんだから経営方針とか他企業との親交とかそっちの方中心にやればいいと思うんだけど。
この人は現場主義で今だに編集の方に口を出し過ぎる。

でも若い子たちにはロマンスグレーとか言われて大人気だ。
まあ金も持ってるしね。
肩幅もあってスーツも似合う。
いい男だと思うけど、もうお爺ちゃんじゃん。


「でも、ターゲット20代女性ですよね。若い子に任せればいいじゃないですか」

「任せてみてダメだったから言ってるんだ。
今の若い子はバブル崩壊後の子たちだから冒険心が足りなくてな」

「じゃなんですか。私はいい歳して冒険心だらけだとでも?」

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