ショコラ~愛することが出来ない女~

 そして、数日後。
再び社長に呼び出された時、会議室にいたのは森宮さんと庄司くん。

ちらりと庄司くんを見ると、肩をすくめて社長に目をやる。

社長はと言えば、してやったりっていう表情。

なるほど。
これを狙っていたのね?


「現【EAST WEST】編集長、森宮くんだ。志願してくれて君たちの下に入る。鍛えてやってくれ」

「よろしくお願いします」


ビシッと背すじを伸ばして直立した後、ゆっくりとお辞儀をする。
まるで新入社員のような初々しさでそこに佇む森宮さんに、かつての奢った感じはなかった。


「こちらこそよろしくお願いします。
すごいわ、社長。とびきり有能な若手を連れてきてくれたんじゃないですか」

「まあな。お前らについてけるような若手はそうそういないから。助かったよ、志願してくれて」

「いえ」


ぽんぽんと肩を叩いて、社長は忙しいのかすぐに会議室を出ていく。

あのタヌキ親父はホントにって思うけど。
流石だなって思うところもある。


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