ショコラ~愛することが出来ない女~
「桂木さん」
森宮さんがかしこまって前に来る。
「あの日、トイレで私が言ってた話聞いてました?」
「え?」
やっぱりばれてたのか。私がいたこと。
「……聞いてたわ。でも事実よね。私は社長とは新人時代からの付き合いがあるし、実際年齢はおばさんって年だわ。
あなたがそんなに気にすることないわよ」
「いいえ。桂木さんが何故大事にされるか、分かった気がします。
一から勉強させてください」
真っ向そう言って向かってくる森宮さんは、何だか頼もしい。
「気に入ったわ。頑張りましょうね」
手を伸ばすと、握り返されるその手は力強い。
「もちろんです」
やっぱり社長には頭が上がらない。
使える相棒を手に入れてくれたんだもの。
「あのー、俺も仲間にいれてくださいよー」
庄司くんのちょっと情けない声が面白くて、私と森宮さんは顔を合わせて噴き出した。