ショコラ~愛することが出来ない女~
「俺は出来ません。彼女に魅力が感じられないんです」
「どうして? だって恋愛結婚だったんでしょう?
思い出してみたら、初めて出会った頃とか。
たまに両親に子供預けてデートでもすれば、昔の気分思い出すかもよ」
「……この話やめましょうよ。康子さんにそんなの言われたくないんですけど」
いつの間にか、庄司くんの私の呼び名が変わっている。
『桂木さん』だったはずなのに、今『康子さん』って呼んだ。
それに気付いた途端、胸の奥がずくんと疼いた。
「俺、学生の頃山登りが趣味だったんです」
「ん? そうなの?」
いきなりの話題転換について行けない。
「頂上に登ったらどんな景色が見えるんだろうってワクワクするのが大好きで。仲間と助け合いながら登るのが楽しかった。
苦労しながら一番上まで来ると、ホント気持良いですよ。
視界が開けるって言うのか、今まで見えなかったものが見えてくる感じ。最高だなって思えるんです」
「ふうん」