ショコラ~愛することが出来ない女~
待たせていたタクシーに再び乗り込み、背もたれに寄りかかる。
「酔った体で3階まで往復はきつかった……」
「ですね。俺ちょっと酔いがさめて来ました」
「私は回ってきたわ。気持ち悪い」
「大丈夫ですか?」
気を使ってくれたのか背中をさすってくれるけど。
ますます気持ち悪くなる気がする。
イヤでも、上司として酔い潰れた姿は見せたくない。
「……さっきの山の話に例えますけど」
「え、なに?」
「康子さんの場合は、同じ頂上を目指せなかったって事ですよね」
「……」
同じ頂上。
同じ夢。
そうね。
私は、隆二くんと同じ夢が見れなかった。
恋愛ならそれでも続くのに、家族になってしまうとなぜダメなんだろう。
共有する部分が増えれば増えるほど、同じものを目指せなかった時に割れ目が大きい。