ショコラ~愛することが出来ない女~


「康子さん、大丈夫ですか」


呆れたような声で、庄司くんが車から降りる。

ああ威厳が台無し。

その途端、タクシーが走りだしたから驚いた。


「……あれ?」

「料金ならちゃんと払いましたよ。ほら立てます?」


いや、そうじゃなくて。
あなたはこれから家に帰るんじゃないの?


「庄司くん?」


右わきに手を入れて立たせてくれる。
そのまま、肩を抱くようにして彼は歩き出した。

突然の親密な距離に驚くけど、私が怪我したからなのだとしたら振り払うのも変な話で。

なんとなくそのままついて行くように歩いた。


< 95 / 292 >

この作品をシェア

pagetop