ショコラ~愛することが出来ない女~
「康子さん、大丈夫ですか」
呆れたような声で、庄司くんが車から降りる。
ああ威厳が台無し。
その途端、タクシーが走りだしたから驚いた。
「……あれ?」
「料金ならちゃんと払いましたよ。ほら立てます?」
いや、そうじゃなくて。
あなたはこれから家に帰るんじゃないの?
「庄司くん?」
右わきに手を入れて立たせてくれる。
そのまま、肩を抱くようにして彼は歩き出した。
突然の親密な距離に驚くけど、私が怪我したからなのだとしたら振り払うのも変な話で。
なんとなくそのままついて行くように歩いた。