ショコラ~愛することが出来ない女~
「痛くありません?」
「平気よ」
「信用できないな」
「何でよ」
その笑い方が気に入らないので、手を伸ばして頬をつねる。
ああこんなこと平気でやるなんて、私も酔っ払いだわ。
「痛みに笑うタイプですよね」
そう言って、庄司くんは私から手を離す。
そこは玄関前で、私は支えを失ってドアに寄りかかった。
「あなたはきっと、離婚する時もそうやって笑ったんだ」
図星だ。
まさかこんなに年下の男に見抜かれるとは思わなくて、敗北感に似た変な感情に、体から力が抜けてくる。
ずるずると重力に従ってお尻をつくと、苦笑いを浮かべた庄司くんが手をのばして私を引っぱり上げた。
そのまま、ぽすん、と彼の胸に収まってしまって。
混乱した頭が考えるのを拒否し始める。