wolf~あなたが生きた冬~
その日から私はリストカットを始めるようになった。

そんなことをしても、咲羅の心の傷は癒えないのに。

馬鹿だ、私は。

その時は

『咲羅はこれよりもっと苦しい思いをしてる。』

そう言って、笑いながら自分の手首を切っていた。

咲羅はそんなことをしても許してくれない。

そんな事分かっていた。

だからこそ切ってしまったのだ。

何度も、何度も。

手首からスゥッーっと流れ、滲む血を眺め

私は狂ったように笑っていた。

そんな私を見た家族は、最初は殴ってまで止めていたのに

呆れてしまったのか、面倒くさくなったのか....

次第に私から離れて行ってしまった。

リストカットを繰り返す日々。

気付けば私の手首は蚯蚓腫れのように

ガタガタになってしまっていた。

そしていつものようにリストカットをしていると、

電話がかかってきた。

『美優ちゃん??...ズッ....今日、咲羅が、グスッ....自殺、しました。』

私は、受話器を落とした。

そして、自分の部屋の壁を殴りつけた。

飛び散った血が絨毯ににじみ、広がった。

『なんでっ....なんでよっ....』

私は私を許せなかった。

咲羅を自殺させたのは、私だ。

そして私は咲羅に許してもらうため、死のう。

そう、考えたのだ。

そして、今日.....

病院の屋上から飛び降りようと、してたのに....

「あんたが止めたんだよ!!!」

私は男の人を責め立てた。

ドンドンと男の人の胸を力いっぱい殴った。

そんな私の両手首をぐっと握り、

「お前が死んだところで、お前の親友はお前を許してくれるのか?」

そう、真剣な顔で言った。

「え.....?」

「死んだって罪は償えねぇ。死んだら無になるだけだ。俺がお前だったら、
精一杯生きる。生きて罪を償う。親友に、俺は頑張ってるぞって言えるように。」

あぁ、私はなんて馬鹿な事をしたんだろう。

死んだら終わり。ただそれだけなのに。






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