ー黒陽ー
ー感情ー


ふと目を開けると、
そこはいつもと変わらない、私の部屋だった


日の光が差し込み
カーテンが風に合わせて波打つように揺れる


頬が、濡れている



またあの日の夢を見た


私が初めて請け負い
還るべき場所へ還した

ただ、それだけなのに






起き上がり、ベッドから立ち上がる


フローリングの床が冷たい

でもその冷たさも心地よい



日の差す窓に歩みより、カーテンを開けると
清々しい青空が広がっている


山々や川、そして少し先に
白く、宮殿を思わせる建物がある

それが、私が所属する
“黒陽”の本部だ



「…おはようございます、リオさん」

チリンという音と共に
ピョンっと窓辺に飛んできた


黒く小さい耳がピンと張り

尻尾はなだらかな曲線を描いて窓枠から垂れ下がっている

ほんの数センチしかない枠に前足を綺麗に揃え
たたずんでいる

「おはよう、アリス。今日は早いんだな」




とても美しく
一点の汚れもない金色の瞳と
黒い毛並みをした猫



しゃべる、黒猫だ


私がここへ来たばかりの頃は、本当に驚いたけど、ここではそれが普通なんだ


「今日も本部へいくんだろう?お前への依頼があるといいがなぁ」


「そうですねぇ~」


着ていた白いワンピースを脱ぎ、あの黒いドレスみたいな制服に着替える

本当は、黒はあまり好きじゃないけど
ここの制服は好きだ

ヒラヒラしててフワフワしてて

クルって回転するとスカートがヒラっとなる


…そこが好きだと言ったら、リオさんにひどくバカにされたのでそれからは話していない





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