〜☆恋愛学園物語☆〜(学園編)
「もうやめてください…弟は…」

人魚の手を力づくで、
止めるが人魚の怒りに火が点いたのか、
軽く擦り抜けてしまう。

人魚は宙に浮き、
りょう君を睨み付けた。

「死人をかばうの?
兄弟揃って、私との婚約を放棄して今さら…
いいわっ…、奥の間で、
あなた達を待つわ、来なければこのまま、
学園の生徒もろとも、
海の底に沈めてあげる…」

人魚は怖い声でそう言い残すと‘パッ’と姿が消えた。

「にっ兄さん…」

りょう君は、
男性の傷を見て
びっくりする。

「こんな事になっていたなんて、気付きもせずに、
僕のせいだっ…」

男性の繋がれた紐(ひも)を解き、男性の手を握る。

「うっ…」

ゆっくり手をおろすと
男性は、
倒れそうになる。

顔をじっと、
見るりょう君。

「兄さん……」

「すまない…何も言わなくてもいい…もう人魚姫との事は父さんにも話しておく…菜月さん…」

私の名前を呼ばれ、
私は、りょう君のそばに。
痛みの激しさから
痛みをまぎらわせたいのか肩を上下させ、男性は、 近くのソファーに、
這(は)いつくばり体をそらす。

「…」

何も言わず目を閉じる男性。

「弟さんの…名前は…?」

私はりょう君に
さりげなく聞いてみた。

きっと、弟さんの事は、
聞かれることに、
少し抵抗(ていこう)が
あるようにも思えたけれど。

このまま男性の名前を知らないままでは、
居たくなかったのかも知れない。





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